運動前のストレッチが筋力を低下させるって聞いたんですけど、本当ですか?
本当だとしたらなぜですか?
今までやってきたことが間違いかもしれないなんて衝撃なのでぜひ教えて下さい!
筋トレやスポーツをしていると、怪我の予防のために運動前には念入りにストレッチをしておこうなんて言われたりしますよね?
しかし、実は運動前にストレッチを行うことは筋力を低下させてしまい、筋トレやスポーツのパフォーマンスを下げてしまうことがわかってきています。
今回の記事では、そんな運動前のストレッチがなぜ運動のパフォーマンスを下げてしまうのか、医療従事者として、そしてパーソナルトレーナーとしての目線からわかりやすくお話していきます。
ストレッチを正しいタイミングで行うことは筋トレやスポーツのパフォーマンスにおいて重要な要素です。
運動をしている人、人に運動を指導している人、僕と同じ理学療法士の方などに是非参考になればと思います。
それでは、運動前のストレッチがなぜ筋力を低下させるのかについてお話していきます。
運動前のストレッチは筋力を低下させる?
2010年、ストレッチは運動における怪我の予防ができるというエビデンスが発表されています。(McHugh MP, 2010)
しかし、その一方でストレッチをすると筋力が低下すると言った言葉を聞いたことはないでしょうか?
これは主にスタティックストレッチを行う場合に言われる言葉ですね。
実際、ストレッチと筋力の関連についての研究報告やそれらをまとめたレビューには昨今まで様々なものがあります。
今回、簡単にこれらをまとめてみましたので、良ければご参考にしてください。
90秒以上伸ばすと筋力は低下する!ストレッチは45秒まで!
2013年、Simicらは45秒以下のスタティックストレッチ実施後は通常時と筋力はほぼ変わらないのに対して、46〜90秒で-5.1、90秒以上の実施で-6.1秒と明らかな低下が見られることを示しています。
また、その筋力低下は30分から60分ほど持続するとも言われています。
もし、運動前にスタティックストレッチを行う場合、筋力の低下を避けるのであれば、ストレッチの実施時間は45秒までにとどめておく方が良さそうですね。
ストレッチで筋力が低下する理由
ストレッチで筋力が低下する理由として考えられるのは、Ⅰb抑制の影響でしょうか。
Ⅰb抑制とは、筋肉が限界まで引き伸ばされたときに起きる現象のことです。
通常、僕たちの筋肉はα運動神経という運動神経により支配されており、この神経の作用により筋肉が収縮する仕組みになっています。
Ⅰb抑制とは、筋肉が限界まで引き伸ばされたときにα運動神経が働いていては筋肉が一切緩まないため、そのまま筋肉が引きちぎれてしまいますよね。これを防ぐためにα運動神経の働きを抑制するといったものがⅠb抑制です。
そして、これが起きるということは、筋肉を収縮させる運動神経が抑制されるため当然筋力は出にくい状態となるということです。
運動前のストレッチは不必要?
ここまで述べた内容を考えると、普段僕たちが部活などで行っている運動前のストレッチは筋力を低下させ、パフォーマンスを落としてしまう可能性がでてきそうですよね。
実際に、2017年、カンピナス州立大学のJuniorらは同じ強度の運動を行った場合の運動回数がスタティックストレッチ実施後は減少することを報告しており、同時に筋肥大効果についても減少することを報告しています。
そして、2019年には筋電図による研究も行われており、その結果からスタティックストレッチは瞬発的に発揮される筋力を低下させることが示されています。
つまり、僕たちトレーニーはもちろん、短距離走選手などの瞬発的な運動を行う選手にとってもスタティックストレッチは運動前には行うべきではないということが言えます。
運動前にストレッチをするとしたら?
しかし、そうは言っても運動前にストレッチをしないとなんか不安というか、筋肉がほぐれていないから怪我をしてしまいそうな気がしてきますよね。
大丈夫ですよ、スタティックストレッチではなくダイナミックストレッチをすればOKです。
2011年のBehmらの報告によれば、ダイナミックストレッチではスタティックストレッチのように筋力の低下はみられず、むしろ90秒以上実施することで筋力が向上することが示されています。
運動前にはスタティックストレッチではなくダイナミックストレッチを行えば、怪我を予防するだけでなく、パフォーマンスの向上も狙えそうですね!
まとめ
今回の記事は以下のような内容でした。
- 90秒以上のスタティックストレッチは筋力低下を起こす
- 運動前にストレッチを行いたい場合45秒までに留める
- 運動パフォーマンスを向上させるためのストレッチにはダイナミックスタティックストレッチのほうが良い
このブログでは、上記のようにフィットネスやダイエット、食事などに関連した内容を、医療従事者(理学療法士)兼パーソナルトレーナーの目線からお伝えしていきます。
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今回は、以上です。
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