痩せるためには脂質を減らす。脂質を食べると太る。
脂質ってなんとなく悪いイメージがありますが、実際はどんな栄養素なんでしょうか?
詳しく知りたいです。
身体の健康を考える上でなんとなく悪者なイメージのある脂質。
脂質と聞くと太りやすいというイメージがありますが、実際には脂質は身体にとってとても大切な栄養素です。
脂質は実際にはどんな栄養素で、身体にどんな作用があるのでしょうか?
今回の記事では、脂質の基礎知識や一日の摂取量など、意外と知らない脂質についてお話していきます。
脂質とは
私達が普段から食事で摂っている脂質。
なんとなく体脂肪になりそうなイメージがあり、身体に悪いイメージがありますよね?
しかし、実際は炭水化物、タンパク質と同じ三大栄養素の一つであり、身体に欠かせない大切な栄養素です。
まずは、そんな脂質がどんなものなのかについて見ていきましょう。
脂質はホルモンや細胞膜の材料
脂質は、身体のエネルギー源となる他、身体のさまざまな機能を調整する役割のあるホルモンや、身体を構成している細胞の一部である、細胞膜の材料でもあります。
もし脂質が不足すると、エネルギー不足の他、ホルモンや細胞膜の材料が不足する影響により、ホルモンバランスの乱れ、肌トラブルや皮膚炎が生じやすくなります。
ダイエットや間違った健康意識などにより脂質の摂取を過剰に制限することは、かえって健康を害する可能性があります。
脂溶性ビタミンの運搬も
脂質は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKといった脂肪に溶ける性質のある脂溶性ビタミンを運搬する役割もあります。
これらの脂溶性ビタミンは、目や血液、骨などに関係するビタミンです。(下表参照)
脂質が極端に不足すると、これらの脂溶性ビタミンが身体に吸収されにくくなり、目が見えにくくなる、貧血や血が止まりにくくなる、骨がもろく弱くなるなどの健康被害が生じるリスクが高くなります。
はたらき | |
ビタミンA |
|
ビタミンE |
|
ビタミンD |
|
ビタミンK |
|
脂質の種類:不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸について
次に、脂質の種類についてお話します。
脂質を構成する成分に脂肪酸というものがあり、脂質はこの脂肪酸の種類によりいくつかに分けられます。
大きくは不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の2種類に分けられ、不飽和脂肪酸はさらにn-9系、n-6系、n-3系の脂肪酸の3種類に、飽和脂肪酸は長鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸の3種類に分けられます。
脂肪酸の種類によっては、良質な脂質と呼ばれるものもありますし、今流行りのMCTオイルが何故身体に良いとされるのかなどもこの脂肪酸の種類ごとの役割や身体への影響の違いが関係しています。
健康やボディメイクのためにも知っておくとオトクなお話かもしれません。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸はn-9系脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸の3種類があります。
この3種類の不飽和脂肪酸のうち、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸は体内で合成できないα-リノレン酸、リノール酸、アラキドン酸といった脂肪酸を含むため、まとめて必須脂肪酸と呼ばれています。
それぞれについても簡単に記載しますね。
n-9系脂肪酸
代表的なものにはオリーブオイル、アーモンドなどに含まれるオレイン酸があります。
摂取すると善玉コレステロール(HDLコレステロール)の量はそのままに、悪玉コレステロール(LDLコレステロール) を下げると言われています。
また、過酸化脂質を作りにくく、飽和脂肪酸と比較して発がん性物質が少ないとされます。
n-6系脂肪酸
n-6系脂肪酸は、リノール酸、γリノレン酸、アラキドン酸などがあり、ごま油、大豆油やコーン油、ひまわり油などに多く含まれ、血中のコレステロール値を下げる作用があり、その一方で、過剰摂取により善玉であるHDLコレステロールまでも減らしてしまったり、アラキドン酸にはアレルギー症状を強める作用があります。
日本人が主に使用する油の種類を考えると、日本人の生活ではn-6系脂肪酸は過剰摂取となりやすく、n-6系脂肪酸のメリットよりもデメリットを受けやすいため摂取量は注意が必要です。
n-3系脂肪酸
n-3系脂肪酸は、αリノレン酸、DHA、EPAなどがあり、しそ油、ごま油、魚の油、くるみなどに多く含まれ、血液をサラサラにしたり、動脈硬化の予防に伴う虚血性心疾患や高血圧の予防、脳や神経組織の発育、がん細胞抑制、アレルギー症状の改善などに作用します。
日本人の生活ではあまり摂取しない種類の脂肪酸であり、必須脂肪酸の中ではn-3系脂肪酸は不足傾向です。
普段から魚(サバなどの青魚がおすすめです)やくるみを食べることを意識するといいかもしれません。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸には、長鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸の3種類があります。
この種類は、脂肪酸の分子構造を構成する酸素、水酸基、炭素のうち、炭素が構成している鎖の長さにより分類されます。(下図)
最近ダイエットに良いとして話題になっているMCTオイルはこの3種類のうち中鎖脂肪酸にあたります。
不飽和脂肪酸に必須脂肪酸が含まれていることと比較して、飽和脂肪酸は身体に良くない油と思われがちですが、実際のところ、そうではありません。
長鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸のうち、実際に身体に良くない影響を及ぼす可能性があるのは長鎖脂肪酸で、中性脂肪やコレステロール値の増加をさせる可能性がありますが、中性脂肪酸や短鎖脂肪酸はむしろ、脳機能の改善や腸内環境の改善など、健康状態の改善に関する作用があります。
そんな飽和脂肪酸についてみていきましょう。
長鎖脂肪酸
長鎖脂肪酸は炭素が構成している鎖の長さが長い(Cの数が12〜18個)脂肪酸です。
長鎖脂肪酸は主に肉類に多く含まれ、消化吸収速度が遅く、体脂肪として体内に蓄積されやすいと言われています。
転じて、消化吸収が遅いということは腹持ちがいいという風にも置き換えられ、うまく使えばカロリー管理に役立つ可能性もあります。
中性脂肪酸
中鎖脂肪酸は炭素が構成している鎖の長さが8個から10個程度の脂肪酸です。
母乳や乳製品にも含まれますが、ヤシやパームなどに含まれるMCTオイルからが最も効率よく摂取できます。
中鎖脂肪酸の最大の特徴は消化されるのが早く、活動エネルギーとして素早く利用されるため、体脂肪として蓄積されにくいことです。
最近ダイエットに良いとして話題になっているのも、体脂肪として蓄積されにくいことと、エネルギーとして利用されやすいといった特徴からです。
MCTオイルが何故ダイエットに向いているのか、またどんなMCTオイルが良いのかなどについてはこちらの記事にも記載していますので、是非合わせてお読みください。
短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は炭素が構成している鎖の長さが2〜6個と短い脂肪酸のことをいいます。
短鎖脂肪酸は、食事で脂質を摂取することの他、食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌が発酵することでも生成されます。
短鎖脂肪酸は、腸内の善玉菌の生成を促し、悪玉菌を減少させる働きがあります。
さらに、短鎖脂肪酸は腸内の殺菌や菌の活動を抑制する静菌作用により、最近やウィルスの侵入を防ぐバリアのような役割もあります。
短鎖脂肪酸は、すでに述べたよいうな食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵し生成することの他、バターなどにも多く含まれています。
健康管理やボディメイクをしていると必ず出会う良質な脂質というワード。
良質な脂質とは何を指した言葉なのでしょうか?
良質な脂質といったワードは、n-9系脂質の中のオレイン酸やn-3系脂質であるDHAやEPA、中鎖脂肪酸であるMCTオイルのことを指す言葉です。
つまり、良質な脂質とは、身体にとって良い影響を及ぼすとされる脂質の総称のことです。
必須脂肪酸や不飽和脂肪酸、中鎖脂肪酸だけを指した言葉ではないため、注意しましょう。
脂質の身体への作用
ここまで、脂質の種類や役割について話をしていきました。
次は、脂質が身体へ及ぼす作用についてお話をしていきます。
脂質を摂ると、なんとなく腹持ちがよかったり、かえって胃もたれを起こしたりしますよね?
この項では、そのような作用が何故生じるのかについてお話をしていきます。
脂質の消化吸収について
そもそも、脂肪の多い食品は、糖質やタンパク質が主体の食品に比べて、消化の始まりが遅く、吸収に時間がかかります。
脂っこいものを食べたときに、腹持ちがよかったり、逆に胃もたれを起こすのはこれが理由といえます。
実際、脂質の消化吸収には、食後3〜4時間かかるとされており、摂取された脂質は多くの道のりを経て身体に消化・吸収されます。(その詳細についてはあまりにも細かいため割愛致します)
これをうまくつかうと、結果として食欲のコントロールも可能です。
例えば、朝に炭水化物や脂質を摂ることを抑えるために、朝食をプロテインに置き換え、なおかつその中にオリーブオイルなどの脂を足すことにより腹持ちを良くして1日の総摂取カロリーを抑えるなどといったことでしょうか。
脂質は消化吸収の効率が悪いということはメリットともデメリットととも捉えられるため、自分自身がどのような目的で食事管理をしているかを考えた上で脂質の摂取方法は考える必要がありそうです。
脂質と健康
ここまでで述べてきたように、脂質は過剰に制限すると、腸内細菌やホルモンのバランスを崩したり、ホルモンバランスの不均衡、肌トラブルなどの不調を起こします。
脂質は身体にとって悪いものという考えかたは一度捨ててしまって、自分にとってどれだけの脂質が必要なのか、についてだけ考えることが、ダイエットや健康のためにも重要なのかもしれません。
脂質は1日にどれくらい必要?
厚生労働省発表の、2020年版日本人の食事摂取基準によれば、1日の総摂取エネルギーの20~30%程度を脂質で摂ると良いとされています。
1日の摂取カロリーが2,500kcalだとすると、500〜750kcalを脂質で、脂質は1gあたり9kcalなので、1日に56〜83g位をとる計算になります。
また、1日に摂取する脂質のうち、飽和脂肪酸はさらに総摂取エネルギーの10~7%以下にするように定められており、大部分を不飽和脂肪酸で摂取することが推奨されています。
これは、飽和脂肪酸のうち長鎖脂肪酸が体内に蓄積されやすく、生活習慣病との関連があるためです。
1日に摂取する脂質の大部分を不飽和脂肪酸で摂取するためには、オリーブオイルを使うことや、魚を食べる意識をする必要がありそうですね。
まとめ:脂質は大切な栄養素。適切な量を摂りましょう。
今回は、脂質についてお話をしていきました。
太る原因のようなイメージがあり、健康やボディメイクのためには悪者のようなイメージである脂質でしたが、実際は身体の健康維持のために大切な役割をしていましたね。
脂質の他に、炭水化物やたんぱく質についても記事を書いておりますので、合わせてお読み下さい。
このブログでは、上記のようにフィットネスやダイエット、食事などに関連した内容を、医療従事者(理学療法士)兼パーソナルトレーナーの目線からお伝えしていきます。
他の記事も是非、ご一読ください。
今回は、以上です。
コメント