運動をすると酷い筋肉痛になってしまいます。
筋肉痛を早く治す方法はないですか?
また、筋肉痛がある時に運動はしてもいいんですか?
筋肉痛と調べても動いてれば治るとか、信頼できる内容が出てきません。
医療従事者の専門的な解説がほしいです。
筋トレなどの運動をしていると必ずどこかで付き合うことになる筋肉痛。
痛くて動けなくなるし、とても辛いですよね?
かといって、筋肉痛が来ないと、なんとなく筋肉が大きくならないような気がして、不安になったりもします。
今回は、そんな筋肉痛について、そもそも筋肉痛とはなんなのか?といったところに簡単に触れた後、その基礎知識と治し方をテーマとして、PT×PT(理学療法士×パーソナルトレーナー)の立場からわかりやすくお話していきます。
筋肉痛とは
筋肉痛は運動やトレーニングを行った結果生じる、筋繊維の損傷を修復する過程で生じる筋肉の炎症のことを言います。
普段運動していない人が急に運動をしたり、普段よりも負荷の高いトレーニングをしたり、普段使わない筋肉を使ったりなど、慣れない運動を行うことでなりやすいと言われます。
筋肉痛には種類がある?
筋肉痛は生じるタイミングにより以下の2種類に分けられます。
即発性筋肉痛
即発性筋肉痛とは、運動した直後、もしくは運動している最中から起こる筋肉痛のことを言います。
運動を続けた結果、筋肉が酸素欠乏状態に陥ることによって、痛みの原因となる疼痛物質(ブラジキニンやアデノシンなど)が蓄積し、筋肉痛が生じます。
遅発性筋肉痛
遅発性筋肉痛とは、運動してから数時間~数日後に起こる筋肉痛のことを言います。いわゆる一般的な筋肉痛のことですね
遅発性筋肉痛が生じる原因は、運動後に乳酸が蓄積することが原因とされていました。
しかし、実際には乳酸は運動のエネルギーとして再利用でき、血液中の乳酸値は運動後すぐ低下することがわかってきました。
そのため、現在では乳酸は筋肉痛の原因にはならないとされています。
現在は、筋肉痛は損傷した筋線維を修復する過程における炎症や、筋繊維の損傷によって生じる疼痛物質によって起きるものだと考えられています。
筋肉痛がないと筋肥大しない?
「筋肉痛がないと筋肉は育たない」と思ったこと、言われたことはありませんか?
上記でも説明した通り、筋肉痛は損傷した筋繊維を修復する過程での炎症による痛みであるため、筋肉痛が来ないということは、十分な筋繊維の破壊ができておらず、筋肥大の効果が得られないのでは?と考えられます。
たしかに、筋の損傷は筋肥大における重要な要素です。しかし、必ずしも筋肉痛が生じるほどの損傷は必要ではありません。
むしろ、強すぎる筋肉痛は、その痛みから過度な安静につながったり、痛みを我慢する際に生じる筋肉の強い収縮(防御性収縮)により、関節の動きに制限が生じる場合もあり、身体に悪影響を及ぼす可能性もあります。
また、2011年のKyleらの研究により、筋肉痛がある場合とない場合それぞれにおいて、生じる筋肥大に差は見られなかったと報告されていることからも、筋肉痛が来なければ筋トレの効果がないというわけではないということが証明されています。
とは言っても、筋トレをしたあとに筋肉痛が来ないと若干不安になってしまうもの。
そのことも踏まえると、翌日軽い筋肉痛が来る程度に筋トレをすることが最適解かもしれません。
筋肉痛があっても運動はしていい?
筋肉痛があるときでも運動や筋トレはしたほうがいいのか、といった質問はよくみられます。
これについては様々な意見がありますが、筋肉痛がある状態は、既に述べたように、損傷した筋繊維が回復している最中です。
筋肉痛があるにも関わらず、さらに筋繊維を損傷するようなトレーニングを行った場合には筋繊維の回復が十分に行えず、筋肉痛が長引く原因になったり、十分な筋肉の成長が得られなくなったりするなどが考えられます。
また、筋肉は常に合成と分解を行っているため、回復が間に合わないと分解が優位になってしまい、結果的に筋肉が減ってしまう状態、カタボリックが生じてしまうかもしれません。
筋肉痛がある時は、休む、もしくは少なくとも筋肉痛がない部分のトレーニングや運動を行うようにするほうが良いでしょう。
筋肉痛が起きやすい運動・起きにくい運動
この項では筋肉痛が起きやすい運動、起きにくい運動について述べていきます。
どんな運動が筋肉痛が起きやすいのか、起きにくいのかを予め知っていれば、自分の生活環境に合わせて運動やトレーニングのメニューを選ぶことができそうですよね。
それでは見ていきましょう。
筋肉痛が起きやすい運動
筋肉痛が起きやすいとされる運動は、筋肉が収縮をしながらもゆっくりと引き伸ばされていくような運動です。(遠心性収縮、エキセントリック、ネガティブ動作などという)
起きやすいというよりは、こういった運動以外では基本的に筋肉痛は生じません。
例えば、ゆっくりと階段を降りていく運動や持ち上げたダンベルやバーベルをゆっくりと下ろすときの運動がこれに当てはまります。
筋トレの種目としては、ダンベルフライやフレンチプレスといった、ストレッチ種目と言われるものがこの運動方法を中心に行う種目です。
こういった運動は、筋肉痛が生じやすい反面、筋肥大の効果が高いとも言われているため、ボディメイクなど筋肉を大きくする目的でトレーニングをしている人にとっては、有効と言えるでしょう。
逆に、運動はしたいが、あまり筋肉痛になりたくないと言う人はこういった運動は避けるべきと言えます。
筋肉痛が起きにくい運動
筋肉痛が起きにくい運動は、起きやすい運動の逆、筋肉が収縮すると同時に筋肉の長さが短くなるような運動です。
例えば、ダンベルを持ち上げる時の運動や、油圧式のマシンのような、押す時だけに抵抗がかかる器具を使ったトレーニングなどが当てはまります。
介護用のトレーニングマシンなどはこのような種類の運動方法が多いですね。
健康のために、運動はしたいが、筋肉痛になりたくないといった方はこのような運動を中心に行うと良いかもしれません。
筋肉痛の治し方
最後に、筋肉痛の治し方について話していきます。
既に述べた内容ですが、筋肉痛は損傷した筋繊維を修復する過程での炎症が生じた状態です。
この炎症反応は、運動やトレーニングによって生じた痛みの原因となる疼痛物質が、トレーニングを行った筋肉だけに留まり続けるとより長く続いてしまうため、結論としては、筋肉痛を早く治すには、血流を改善すれば良いということになります。
実際に、2018年のDupuyらによる筋肉痛のケアに関する研究により、運動後のマッサージが最も筋肉痛の改善・回復には効果があると明らかにされています。
マッサージで血流を良くして、血液中の疼痛物質の滞留を防ぐ、一箇所に留まる量を減らすことが筋肉痛の改善・回復に効果があるということですね。
ちなみにですが、この研究では、運動前後のストレッチには筋肉痛軽減効果はなかったとされています。ストレッチにも身体の血流改善効果はあるのに不思議ですよね。
これについては、2011年のNagasawaらによる研究の結果から、効果の乏しい理由が説明出来そうです。
この研究では、ストレッチによる血流改善効果の検討がなされているのですが、30秒間のストレッチ後に血流改善効果は見られるものの、その効果の持続時間は1分程度しかないというものでした。ごく僅かな時間の血流改善効果しか得られないのであれば、たしかに筋肉痛の改善効果は少なそうですよね。
その他、筋肉痛の改善に効果的だと言われているのは、運動の休養期間中に血流改善を目的とした軽い運動(ジョギングやウォーキング)を行う、積極的な休養(アクティブレスト)と言われる方法や、入浴や湯たんぽの使用などで、筋肉痛のある部位を温めてあげることが挙げられます。
このように、筋肉痛の治し方は色々な方法があります。
酷い筋肉痛で悩んでおり、早く治したいといった方は、上記のようは方法から、自分のやりやすい方法を選び、実施することを試してみましょう。
まとめ:筋肉痛は血流を改善して治そう
今回は筋肉痛はどういったものか、そしてどう治すのかなどについてお話をしました。
このブログでは、上記のようにフィットネスやダイエット、食事などに関連した内容を、医療従事者(理学療法士)兼パーソナルトレーナーの目線からお伝えしていきます。
他の記事も是非、ご一読ください。
今回は、以上です。
<参考文献>
1. Kyle L Flann, et al.Muscle damage and muscle remodeling: no pain, no gain?:J Exp Biol. 2011 Feb 15;214(Pt 4):674-9. doi: 10.1242/jeb.050112.
2. Dupuy O, et al. An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis. Front Physiol. 2018 Apr 26;9:403.
3. Nagasawa T, et al. Effects of static stretching for diŠerent durations on muscle oxygen saturation and muscle blood flow in the stretched muscles. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci. 56: 423433, December, 2011
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